イケメン部長と(仮)新婚ライフ!?
テーブルに広げていた資料をざっとまとめ、「どうぞ」と促すと、彼は挑戦的な瞳を俺に向け、単刀直入に言う。


「部長、結婚してるっていうのは嘘ですよね?」


……えらい自信満々に言うんだな。

一葉が口を滑らせたか? ありえる。というかそれだろ。

まぁ、誰かにこうやって聞かれるであろうことは想定済みだ。そういう時は“何言ってんだ”と一蹴するつもりでいたが、早乙女に対しては少し意地の悪い返しをしたくなる。


「だったらどうする?」


こちらも挑発的な目で見据えると、早乙女は一瞬面食らったような顔をした。

しかし、すぐに険しい表情に戻り、きっぱりと言う。


「彼女を奪います」


……これも想定済み。

さっき一葉は、『こんな私でも、好きだと言ってくれる人がいた』と漏らしていた。それはきっと早乙女のことだろうと予想がつく。

早乙女は意外と野心家だな、と普段の仕事ぶりを見て思っていた。だから、あっさり身を引くようなタイプではないだろう。

冷静に「そう」とだけ返すと、彼は少しムッとして、眉根を寄せる。


「ずいぶん余裕なんですね。僕にはそんなことできないと思ってます? それとも……一葉ちゃんを弄んでるんですか?」

「どっちも不正解。俺に渡さない自信があるってだけ」

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