イケメン部長と(仮)新婚ライフ!?
思考がそれでいっぱいになった瞬間、私は衝動的に自分でも驚く行動に出ていた。

部長の方に身を乗り出すと、彼の手からグラスを奪う。そして、琥珀色の液体を、ぐびぐびっと喉に流し込んでいたのだ。

酔っ払うと人はこうも大胆になるものかと、頭の片隅で他人事のように思いながら。

ギョッとした部長は、慌てて私の手からグラスを奪い返そうとする。


「おまっ、何やって──!」

「まずはこのお酒の味から知ろうかと!」


ドンッとカウンターにグラスを置いて、逆ギレしたような口調で言い放った。

くはー、喉と胃が熱い……! こんなカクテルみたいに甘くも、ビールみたいに喉越しがいいわけでもないお酒、よく飲めますこと!

部長のことを理解するには、かなりの時間が掛かりそう。


「大人れすね……私とは、じぇんじぇん違う……」


再びろれつが回らなくなって、一気にクラクラし始めた私は、ドサリとカウンターに突っ伏した。唖然としたままだった部長が、呆れたようなため息とともに呟く。


「……お前、ほんとバカだな」

「へへへ」


夢の中に片足を突っ込みながら、なぜか気持ち悪い笑いを漏らす私。

もうダメだ。もう意識を保つのも限界。


「知りたい、れす……部長のこと……おしえて……」


最後に残っていた思考をうわごとに乗せて、私の意識は深いところへと落ちていった。




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