イケメン部長と（仮）新婚ライフ!?

今さら気付かされて、思わず「げっ」と口にする。

なぜかしたり顔のふみかは、ニヤニヤしながらビールのグラスに手を伸ばした。


「あの会話、いろんな意味に取れるもん。あの場にいた女子は皆赤面してたよ」

「うそぉ……」

「購買部の人は、一葉が入社当時から坂本だって知ってるから、さすがに夫婦だとは思わないだろうけど、付き合ってるのかなーとは思うかもね。それが他部署では、いつの間にか結婚してた、って噂に変わっちゃったんじゃないかな」


驚愕する私に、ふみかは自分の推理を聞かせてくれた。

言われてみればそうかもしれない。私みたいなただの事務員は、他部署では名前なんてほとんど知られていないはずだし。

全然気にしてなかったよ……。火のないところに煙は立たないと言うけれど、まさかこんな火種があったなんて！


頭を抱えたくなることばかりで、料理もお酒も十分に楽しめない私に、美味しそうにビールを呷ったふみかが言う。


「もう部長からは逃れられない運命だと思ってさ。結婚シミュレーション、攻略目指して頑張って♪」


部長と同じように楽しんでいる感が満載の彼女だけれど、私はもう言い返す気力もなく、黙々と食事を進めるのだった。