ゆえん


「今日の看板の、いいね。あの言葉」


最初に入ってきた三人組の主婦が冬真に声を掛けた。


「そうですか。ありがとうございます」


午後に子連れのリトミックダンスの会がホールを使うことになっていて、今日は楓と理紗が、会場作りのため十一時には『You‐en』に来ることになっていた。

楓は入ってくるなり、息を弾ませながら冬真に満面の笑みを見せた。


「今日のひとこと、とってもいい。なんだか優しさと愛情が伝わってくる。沙世ちゃんのこと思い出しちゃった」


心がグッと熱くなった。

この人はやはりわかってくれている。

それだけで冬真の心は満たされていった。


「ワレをつつむ、エイエンなるツキアカリ……。あ、おはようございます」


呟きながら入ってきたのは理紗だった。


「おはよう」

「ワレをつつむ、エイエンなるツキアカリ、店長さんが考えているんでしょ、あれ」

「ああ」

「エイエンなるツキアカリ、ですか」
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