ゆえん


     *

 今日も『You‐en』には、町の人たちがやってくる。

それぞれの過去と胸のうちには色んなものがあるのだろう。


「今日のシフォンケーキ、すごく美味しい」


食べながら笑顔で頷き合う客を見ると心が温かくなる。

 
沙世子のレシピによるデザートを食べて、ほんの少しでも幸せな気分になってもらえるなら、それこそが沙世子を生かしていることになるだろう。

この『You‐en』が好きだ。冬真は心からそう感じることが出来た。




  第一章 【湖面の月】~了



    物語は第二章へ……




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