ゆえん


「もしかして、理紗?」


女性は私の顔をまじまじと見ている。

どこかで見たことがあるような気がしたが、思い出せない。


「私、美穂子だよ。第一小学校で一緒だった……」

「あ、え、美穂子?」

「そう!すごい偶然。小学校以来だね」


彼女は小学五年生の時、同じクラスで割と仲の良かった同級生の菊田美穂子だった。


「本当だね」


当時は仲が良かったとはいえ、私は高校時代から同性の友達などいなかったので、どう接していいかわからない。

女性は嫌いだ。

ほとんどの男性も好きではないけれど。


「久しぶりだね。相変わらず綺麗なのね。感心しちゃうわ」


美穂子はそう言いながら子供を一番奥の席に座らせ、メニューを見ている。

美穂子はどう見ても、綺麗とも知的とも言えない印象だ。

茶髪にした髪は傷んでいてパサパサしているし、赤いチェックのミニスカートを穿いている。

若いように見えるが、魅力がない。


「ドリンクバーがあるね。マユ、オレンジジュースでいいかな」

「うん」


美穂子にマユと呼ばれた女の子は満面の笑みを浮かべて、答えた。



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