ニコル
救出と絶望
 すごい勢いで、何かがハヤテの足下に飛んできた。
 瞬間、ハヤテの右足に激痛が走った。
 「痛てええええええ。」
 その声を聞いて、生徒達の視線はハヤテの方に向いた。見ると、ハヤテの足にニコルが噛みついていた。廊下には血が水たまりのように拡がっていた。
 「ハヤテから離れろ。」
 何人かの生徒が、ニコルを執拗に蹴飛ばした。それでも、なかなかニコルははずれない。
 女生徒が廊下にあった消化器を見つけた。
 「ハヤテ君。息止めてて。」
 廊下は真っ白に覆われた。
 「ハヤテ君?」
 あまりのすごさに女生徒はびっくりしていた。すると、煙の中からハヤテの声が聞こえてきた。
 「ゴホッ。ゴホッ。みんな、早く逃げろ。」
 まず、ハヤテが煙の中から出てきた。それからすぐに、ハヤテの足に噛みついていたニコルが飛んできた。そして、無数のニコル達が煙を抜けて飛んできた。
 何が起きたのか理解できずにその場に立ち尽くすもの、ハヤテの言う事を聞かずに、ハヤテを助けに向かうもの、全力で逃げ出すもの、生徒達それぞれが、それぞれの行動をとった。
< 135 / 155 >

この作品をシェア

pagetop