その瞳をこっちに向けて


 自分の部屋に鈴菜を通すと、何度か遊びに来ていた時同様に、部屋にある小さなローテーブルの前に腰を下ろす鈴菜。


そこに私も向かい合って腰を下ろすと、鈴菜がローテーブルに頬杖をつき、大きなため息を吐いた。


「で、あの態度はどうしたのよ?」

「それは……、何て言うか……」



言いにくい。

けど、言わなくちゃいけない。



それを分かっているから、視線を落とすとポツリ、ポツリと言葉を紡いでいく。


「好き過ぎて。…………心臓がドキドキし過ぎて。……爆発しそうで。…………もう中畑先輩の顔を見てるだけでキャパオーバー……みたいな?」


最後まで言った後、自分で首を傾げる。


 多分そんなようなものだとは思うのだが、だから中畑先輩から逃げました。とハッキリ断言出きるかと訊かれたらそれもまた分からない。


自分で自分が分からないのだ。


「えっ?じゃあ、好き過ぎてあんな風に逃げ出しちゃったわけ?」

「うん。多分」

「それ、……重症」

「そんな気はする」



本当は一緒にいたい。なのに、側に居ると逃げたくなる。どうしたらいいのか分からない。どうしたいかも分からない。


ほんと、……重症だ。

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