その瞳をこっちに向けて
自分の馬鹿さ加減に情けなくて苛々して。気付くと両手をギュッと握りしめていた。
その時、鈴菜からパチンッと手を叩く音が響く。慌ててと視線を鈴菜へと戻すと、鈴菜の顔の前でピンッと立てられた人差し指が目に入った。
「じゃあ、今日は麻希から中畑先輩に一緒に帰って欲しいって頼んで来なさい!」
「ええっ!!絶対無理!!」
笑顔でとんでも発言を繰り出してくるが、どう考えても難題過ぎる。
首を横にぶんぶんと何度も振ると、鈴菜の眉間にグッと皺が寄る。
そして、「絶対無理!なんて言葉はやってから言え!」と教室内に響き渡る大声が放たれた。
「そ、そんな……。だ、だって……」
鈴菜の勢いに身を縮めた私から出るのはそんな言葉。ただ、自分でも鈴菜の言ってる事が間違ってはいないと思っているから、その後の言葉は続かない。
そんな私を見て、鈴菜がふうっと息を吐いた。
「大丈夫よ。今更よく見せようなんてしたって遅いって何度も言ったでしょ。だから後は麻希が笑顔で中畑先輩を誘う言葉を伝えるだけ」
「でも……」
今更ってのは重々承知。それでもまだ、情けないけど勇気が出ない。