その瞳をこっちに向けて


格好いい横顔に思わず頬が緩む。そんな私の顔の真横に自分の顔を寄せた鈴菜が眉間に皺を寄せる。


「それにしても、また前に撮った写真見てんのね」

「新しくないけどね」

「何度見ても、私には仁先輩の良さが分かんないわ」

「良さしかないけど」

「あっそ」


 仁先輩の悪い所なんて私には1つも見付けられない。ほんと何で鈴菜は分かんないかなぁ…と思うばかりだ。


「あれ?これってペンダント?」


画面の上にニュッと伸びて来た鈴菜の人差し指が差すのは、仁先輩の首元に光る銀色のチェーン。


 仁先輩は毎日同じネックレスをしていて、殆どカッターに隠れて見えないけど、それが運よく写った写真なのだ。


「うん。そうだよ」

「ネックレスとか着けなさそうなイメージだったけど違うのね」

「ギャップ萌えだよね」

「いや、別に萌えないけどね」

「何でさ!萌え萌えだよ!」

「…………麻希、キモい」



真顔でキモいって、……親友の筈なのに酷い。

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