さよならは言わない
「今も心療内科へ通っているのは知っている。俺も一緒に行ったよ。絵里を苦しめたくないと思っているんだ」
「絵里はね、あんたに捨てられてボロボロだったわ。大学卒業して決まっていた内定もダメになり子どもも死んで絵里はね生きる力を失ったのよ。生きていくことが辛くて絵里は死を選ぼうとしたのよ!!」
友美の「死」という言葉に尊は体が硬直してしまった。
尊は私に裏切られたと思い込んで悲しんだとしても直ぐに立ち直り、新しい恋人との新しい恋へと進むことが出来ていた。
だけど、私はそれが出来なかった。
あまりにも辛すぎて食べることも出来ず飲み物も喉を通らず、生きている価値がなんなのか私が息をすることさえ何の意味があるのか。
私は何度も死を選ぼうとした。
そんな苦しい私の過去を知るのは友美だけだ。
「絵里は死のうとしたのか?」
尊の震える声に友美はやっと尊が自分は何をしてきたのかを思い知ったのだと感じた。
「そうよ。何度も自殺を図ろうとしたわ」
「まさか……」
「だから私が絵里のアパートに住み込んで目を離さない様にいつも一緒に居たわ」
「でも、君も学生じゃないんだろ? その時は社会人なんだろ?」
「それでも一緒に居たのよ。会社と親友の命とどっちが大事だと言うの?!」
尊は初めて私がどれほど尊を想っていたのかを知った。
私がどんなにあの頃尊を想っていたのか。尊への愛を嘘だと決めつけられたが、私の愛情が本物だったとやっと知ってもらえたのだ。