Drop
ハッカドロップ

プロローグ



カラン、コロン。

カラン、コロン。

...ガリッ

____ガシャン

まただ。

大切な何かが、消えてゆく音。

あたしは今まで何度この音を聞いて生きてきたんだろう。

この世で一番、残酷な音。

大切なものが、あるからこそ聞こえる音。

でも、ようやくこの音を聞かずにすむ時が来た。

あたしにとって大切と言えるものは、もう残ってなんて無いのだから。

待っていた訳ではないけれど。

あたしにはもう、何も残ってなんてない。

これから何かを手にする事もない。

例え手にしたとしても、このドロップのように儚く消えて行くだけ。

なら最初から何も手にしない方が良い。

あんな残酷な音を聞くことも無い。

大切な物を作らないほど、楽な事はない。

例え逃げ道でも別に良い。

そう思ってた。

あの日までは_______。

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