絶対、また彼を好きにはならない。
* * *

「ほら」

少し前を歩く貴方の指先が、私の手を求めて差し出される。

冬の柔らかな日差しと、吐き出す白い息と、どこかのお店から流れ出している音楽。
屋外形のショッピングモールであるこの場所。
どこもかしこもまだ先にあるきらきらしたイベントを待ち構え浮き足立っていて、行き交う人の笑顔も、増して輝いて見える。

でも。

手を繋ごうと、振り返るあなたの顔。

クリスマスの素敵な情景を背景にしてしまうほど、貴方しか見えなくなっていることに、我ながらおかしく思う。

私が少しだけ笑いながら手を握り返すと、彼は何笑ってるの?と首を傾げた。

久しぶりのデート。昔は手を繋ぐたびにどきどきしたのに、今はあくまで自然に、指と指が絡んでいく。2人とも大人になったなと、他人事ながらに思いながら、彼の余裕を少しでいいから無くしたいななんて考える自分もいる。

「あ…会社の人に会っちゃったりしないかな」
「わからないけど…別に良くない?」
「だってあたしなんかと一緒にいたら、拓未までまた嫌な噂立てられちゃうかもしれないよ?」

彼は1度だけ目をぱちくりとして不思議そうな顔をしたあと、少し不機嫌そうに、

「そんなん関係ないよ。俺は一緒に戦うし、咲耶は自慢の彼女なんだから」

と言い、肩をすくめ、また前を向いて歩き出した。つないだ手が、また少しだけ強くなる。
今さら何気にしてんのとちょっとだけ怒られて、私はまた、嬉しくなる。

高校の頃からずっと、私は左で彼は右。
なんでだかわからないけど、このほうが落ち着く。

「ねぇ、あそこのお店から見てもいい?」

彼が楽しそうに振り返る。私は大きく頷いて、歩くのをはやめた。
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