君に向かって、僕は叫ぶ。
「....ぇます...み...く...!」

誰かの声が聞こえた。

静かにしてよ。

僕はこのまま、眠っていたいのに。

でも、その声は必死に叫んでいるみたいだった。

意識が引っ張られるように、だんだんその声が鮮明に聞こえてくる。


「聞こえますか!湊君!」

「.........?」

聞き慣れないその声に、僕は目を開けた。

そこには、若い男の人が僕を見ていた。

「...よかった....目が覚めたんだね...。」

安心した顔を僕に向けるこの人は、誰なんだろう。

ここは、どこなんだろう。

そう思って、周りを見てみると、真っ白な部屋に白い服を着た人たち。

消毒液の独特な匂い。

それだけで、ここは病院だということが分かった。

病院というだけで、安心できる。

だって、僕がここにいるということは、母さんたちもここに運ばれている。

みんなも無事だったんだ。

そう思うと、少しだけ安心した。


母さんたちは、どこだろう。

この男の人に聞けば、わかるだろうか。

僕はなんとか声を出して、男の人に聞く。

「.....み、んなは......どこ...?」


「......。」

僕の質問に顔をゆがませ、そして決心したように僕をまっすぐに見つめて、男の人は口を開いた。

「....湊君、落ち着いて聞いてほしい。」




そのあと、男の人から言われた言葉を、僕は他人のことのように聞いた。

聞き間違いだと思う。

でも確かに言った。






「生きているのは、君だけだ」と。






そんな嘘なんて信じるわけがないだろう。



母さんも、父さんも、渚(なぎさ)も、いなくなってしまったなんて。



だけど、男の人は続ける。

「君は幸い、車の爆発から巻き込まれなかった。でも...お母さんたちは車の下敷きになって動けなかったんだ...。」


やめてよ、聞きたくない。


「救急車が到着した時にはもう、間に合わなかった。」


うるさい。


「でも君は生きてる。だから....」


「うるさいっ.....!!!!!!」

もう耐えられなかった。 抑えが利かなかった。


僕は.....気付けば、叫んでいた。


「そんな嘘をつくなぁっ!!!僕は信じない!!!」


ありったけの声で叫んだ僕は、そのあと、すべての人の立ち入りを拒んだ。

一人でいたかった。


現実が、怖かった。

目覚めた先には、もう何もないのだから。













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