Way to happiness
*5*
白い建物…ドアまで真っ白…

earthとは対照的な爽やかな印象…


歩いてるスピードを落とすことなく、ドアを開ける

「遅くなりました!!一条さん!」
「はぁい!お待ちしてました~!・・・あ、こちらが一ノ瀬さんの奥様ですね」

へ?え?この人!!壱弥の!!

「初めまして。一条と申します。今日はよろしくお願いしますね。」
爽やかな笑顔で挨拶する

「初めまして・・・一ノ瀬です…」

全然意味がわからない

関係はないのに私に会わせるってどういうこと?

「すいませんが、これから何回か着替えていただきますので、
こちらにどうぞ…」

清楚な雰囲気からは想像できないような力で背中を押され、
別室へ連れて行かれる

「え?え?壱弥?これはどういうこと?なんなの?」

壱弥の返事を聞く事もなく、ドアは閉められる

「えっと…えっと…まず、貴女は何者ですか?」

「あ~そうですよね。旦那様から口止めされてるので、あまり多くは
語れないのですが…ざっくり言うと、ここのオーナー兼プロデューサーって
とこですね。まずはこれに着替えて、このブースに行ってください。」

笑顔で説明、笑顔で消えていった…

なんなんだ…

とりあえず、着替える・・・
ってバスローブ?

言われたブースに行くと不思議な形のベットに寝かされた

一条を始とした3~4人の女の人に囲まれたかと思うと
液体をかけられ、体中を触られる

「ちょっと!何?!やめっ「すいませんが、お静かに!!」


こわっ…

清楚キャラはどこ行った?

それにしても…

気持ちい・・・



・・・・・・・・


「ぉくさま…おくさま・・・奥様!すいません。」

は!

「はい!」

寝ちゃったんだ…


「すいません…気持ちよくて…」

「寝てしまうほど気持ちよかったなら
私達も嬉しいです。ですが、少し時間がありません。
少し急ぎます。」

スタッフの一人がワゴンをもってくると

3人がかりで顔や髪を触りだす


「あの…なんでこんな…「お静かに」」

なんなの、もう。


鏡もないからどうなってるかもわからないが

メイクされてるらしい


「完成です。奥様。次はこちらに」


次はなんですか・・・

なんだか疲れてきた・・・


怖い笑顔で誘導され、別室へ


何ここ・・・真っ暗・・・

「奥様はここへ…それでは奥様、失礼します!」

促されて立っていると、一条の一言でスタッフが動き出す


「奥様、足を上げてください」
「奥様、手をこちらに」

「え?きゃ!なに?!や!どこ触ってるの!ちょっと!!」

はぁ…はぁ…なんなの!なんなのよ!!

「奥様、これで終了です。こちらに。」
「ちょっと!いい加減にして!ちゃんと説明…きゃっ」

一条は話も聞かず、目の前のドアを開ける



眩しっ・・・


思わず手を翳す

その向こうに人が見えた


・・・壱弥?


フロックコートを着た壱弥が立っていた


「おいで…紗都」


壱弥の元に行こうと足を前に出そうとして気づいた


私…ウェディングドレス?

壱弥…なんで?


「来て…紗都」

紗都の元に来ると紗都の手を取りゆっくり歩き出す


「どういうこと?なんでこんなこと「紗都、聞いて」


洋風の素敵なソファーに紗都を座らせると

目の前に立つ


「覚えてるかな・・・20年前、俺たちが結婚する時、
結婚式はできないけど、写真だけでも撮ろうって言ったら
お前、”20年経ってもまだ二人が本当に愛し合ってたら撮ろうよ”って
俺が”10年じゃだめなのか?”って聞いたらお前は
”10年なんて子供がいたらまだ小学生くらいじゃない。そんな余裕ないわ”って」

「うん・・・覚えてる」


「また忘れてただろ…今日で20年だよ。」

あ・・・
結婚記念日・・・


「俺、20年経ってもまだ、紗都が好きだよ。いや、あの時よりもっと
大好きだ。ずっと愛してるんだよ。毎日その気持ちを伝えたら
お前、嫌がるかなって。だから、20年前から始めたんだ…紗都貯金(笑)」

「紗都貯金?」

「うん。コンビニとかデパートとか、どっか出かけた時
”あ、これ、紗都に似合いそうだな”とか”これは紗都の好物だ”って
紗都に買ってやりたいものを見つけたら、我慢してその金額分の貯金するんだ(笑)」

「なんでそんなこと・・・」

「毎回毎回買ってやっても俺の気持ちは伝わらないんじゃないかなぁって。
じゃあ、小さいものは我慢して、20年後にでっかく伝えたら喜んでくれるかなって。」

「何も買ってくれなくたって大丈夫なのに…」

「俺がそうしたかっただけ。紗都が喜ぶ顔が見たかっただけ。

でもさ…20年経とうとしてる今、紗都が一番欲しいものがよくわかんなくて…
お前、あんまり欲しがらないだろ?まいったよ。
だから、紗都が”いいなぁ…”っていったもの全部やってやろうって思って。

紗都、本当はウェディングドレス着たかったんだろ?それと、旅行!
テレビ見るたびに京都に行きたいって行ってたよな。
それと・・・「ちょっと!!!」

涙でぐちゃぐちゃの紗都

「まってよ・・・なんなのよ・・・

全然話が見えないよ…壱弥はあの人と…
あの人になんでこんな事させたの?私が離婚するって言ったから?
離婚はしたくないけど、あの人とも一緒にいたいってこと?」

「違うよ、紗都。彼女はサプライズウェディングをプロデュースする人で
少し前から打ち合わせしていたんだ。結婚式じゃなく、20年記念のサプライズ
だから前例もなくて、それでも色々相談に乗ってもらって…
一条さんだけじゃなく、他のスタッフの人もアイディア出してもらってさ。

この前、一条さんと俺を見たって日、一条さんの後ろにスタッフの人もいたんだ。
紗都にしてみたら二人きりに見えてあたりまえだけど…
一条さんと二人きりで会った事もないし、そんな気持ちになったこともないよ。
俺には紗都だけだよ…」

話しながら膝まづく壱弥

そっと紗都の膝に手を置く

「それでも離婚したい?紗都・・・俺はしたくないよ?
離婚しても、また口説き落としてプロポーズするよ?」

「壱弥・・・」

涙が止まらない…

声も出づらい…

精いっぱい首を横に振る

「よかった・・・ねぇ、紗都、写真撮ろう。
20年分の幸せを形に残そうよ。
俺は紗都のすっぴん大好きだけど、さっきの紗都も綺麗だったから
メイク直してもらって撮ってもらおうよ。」

紗都が頷くと同時にドアをノックする音

コンコン・・・

「はい」

静かにドアが開き、さっきのスタッフが一礼する

「失礼いたします。カメラマンの準備ができました。
ご案内いたします。」

「はい、よろしくお願いします。紗都、行こう」
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