Last present ~夢を繋いで~ ※Episode2&3追加5.30

同じ楽譜を同じように演奏しているだけなのに、
指先に込める力の使い方を少し変化させるだけで
一気に音色が違って聞こえた。


そんな感動に包まれながら、
由美花との時間を楽しむ。



演奏しながら考えるのは、史也くんだったら、
あそこにあの音色を持っていくんだろうなーっとか、
前奏の合間のパーカッションも、誠記さんだったら、
打ち込みじゃなくて自分で演奏しちゃうんだろうなーっとか。



秋弦……アイツだったら?



昔から、ガンガン行くのが好きだったから
ディスコ系のリズムでアレンジするって言うのもありえるかな?



一つじゃないといけなかった表現のやり方が、
一人一人の個性として捉え方が変わっていく。



そんな風にすら思えるようになった。




夏休みには史也くん独自の練習法。
それは今までの私は体験したことなかったもの。



ずっと当たり前だと思ってる
エレクトーンの安定感のあるリズム。



安定感があるって言うと聞こえはいいけど
それは人によって作られたサウンドで
やっぱり、実際にリアルタイムで叩かれる
生音に比べると、やっぱり感覚が異なってくる。



そんな感覚を補填するのに、
史也君は悧羅学院で繋がりのある年上の先輩を招いた練習。



廣瀬紀天【ひろせ あきたか】さんって言う名前のそのドラマーさんは、
スタジオに姿を見せると、私たちの練習に付き合うように、
その曲のドラムを叩き続けた。



生ドラムで演奏する独特の緊張感は、
打ち込まれたドラムでの安定感なくて全くなくて、
だけどそれ以上に、いろんな意味で自分自身のなかに
今以上に確実なリズム感が研ぎ澄まされるそんな時間だった。



三月から今日まで、そんな風にみっちりと教えてくれた
史也くんと誠記さん。



二人の指導と、美佳先生のレッスン。


大田先生のレッスンも重なって私は上級から三級。

三級から二級。
二級から一級、


一ヶ月に一度の試験を順調に昇級を重ねる。


一度、試験に落ちた秋弦とクラスを同じにして、
七月末の昇級試験で、今まで史也くんと誠記さんの二人しかいなかった
Sクラスの生徒として八月から勉強している。


秋弦もまた、気合と根性?でSクラスの住人になった八月。


Sクラスのレッスンには、私と秋弦。
史也くんと誠記さん。

美佳先生。そして生徒たちを統括する太田先生。



Sクラスになると、レッスン代が殆どかからなくなる
システムだってことに気が付いて驚いたのと同時に、
私にも下級クラスの指導のアシスタントとコンクールやステージ演奏などの声が
少しずつかかるようになってきた。


そして何より自分にとって嬉しかったのは、
私にとっての相棒。


真新しい最新上位グレードの機種を両親が
頑張ってくれたこと。




そんな新しい相棒と両親の応援を受けて、
今は、コンクール用のオリジナル曲の準備に
寝る間を惜しんで向き合ってる。


8月に声がかかって2か月。



10月になった今、11月のコンクールまで
1ヶ月を切ろうとしていた。


コンクールの最終仕上げにかかるこの時期。

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