Last present ~夢を繋いで~ ※Episode2&3追加5.30


教室に戻った後は、誠記さんと大田先生と三人で
夜遅くまで最後の仕上げをしていく。





上手くいってるように思えても、
まだリズムを落とすところもある。





「秋弦っ。
 そこの足タイミングをしっかり。

 足に集中してたら、右手のサックスが甘いよ。
 サックスをもっと歌わせて」



細かいところまで、バシバシっと指摘してくる大田先生。



普段は史也や俺たちに教室の手伝いばかりさせて、
レッスンらしいレッスンって言うのはなかなかお目にかからなかったんだけど
コイツやっぱり指導者なんだなって思う。



指導者であり、プレイヤーなんだ。




練習が終わった頃には22時。



遅くなりすぎた俺たちは、
大田先生の車で、それぞれの自宅まで送り届けて貰った。



家に帰って携帯を見つめても、
アイツからのメールは入ってない。



明日、大丈夫だろうか……。



そんな不安も感じながら、俺は明日の支度を整えて眠りについた。



次の日、俺はいつもの様に起きて音楽教室まで、
父ちゃんに送ってもらう。


そこで大田先生と合流して、エレクトーンを触らせて貰うと、
そのまま時間になったら会場へと向かった。



初めて出場するコンクール。





予選となるのはオリジナル曲を演奏したものを
動画で撮影して送付する映像審査。


第一審査はそのオリジナル曲を演奏を審査会場で演奏。


第二次審査は、会場で出された3つの課題を即座に取り入れた
即興演奏。


後は自由曲が一曲。



そして今日迎えるセミファイナル。



予選審査と一次審査で演奏しなかった
オリジナル曲。

そして課題曲の編曲アレンジ。



コイツに受かったら、
最後のグランプリファイナル。


オリジナル2曲以上、全4曲以上の構成で、
与えられた30分間をフルに活用したリサイタル形式の試験。




グランプリファイナルを目指して
勝ち上がってきた選りすぐりのやつらが一同に集まる。








「おはよう」





そう言って姿を見せたのは、
昨日、倒れた奏音。



まだ見ただけで体調が完全じゃないのは
伝わるんだけど、おばさんに付き添われて来てた。





「奏音、なんて顔してんだよ」

「だって……今日は大切な日だから。
 史也くんは?」




少し俯きながら紡ぎ出したアイツの名前。





「あぁ、史也はまだ居ない。

 あっ、大田先生が練習室借りてくれて
 エレクトーン持ち込んでる。

 弾いてくるか?」


「うん」



奏音は頷いて、大田先生が借りてくれた
練習室へと向かった。



奏音を送り出した後、俺は落ち着かず、
会場の外へと出る。



『電源が入っていないため、
 かかりません』


会場の外から史也に携帯で連絡するものの
今日もアイツが出る気配はなかった。







今も冷静に見えて、
取り乱したプリンセス。




悔しいけど、
アイツを支えられるのは
俺じゃない。




悔しいけど、
俺じゃダメなんだよ。




アイツが求めてるのは……
アイツが求めてるのは、
今も昔も、お前だけだから。
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