Last present ~夢を繋いで~ ※Episode2&3追加5.30




そう言うと、美佳先生に部屋を借りますっと伝えて
レッスン室へと入っていった。




とりあえず聞いて欲しいのは「煌めきの彼方へ」。




大好きな史也くんのあの曲。





エレクトーンの電源を入れて、
そのままデーターを読み込ませると、
私は静かに演奏体制に入った。



史也くんの演奏するオリジナル曲は、
何処までも疾走感の漂う明るいアップテンポの曲。


挫折なんて知らない、苦しみなんて知らない、
そんな雰囲気も漂わせる本当に一途に明るい光を追いかけてる。



そんな曲なんだけど、
私は……明るいだけの時間なんてないって知ったから。


明るさだけじゃなく、苦しむことも挫折することも、
未来に繋げていけば、光は降り注ぐって伝えてあげたい。



私も挫折と苦しみを乗り越えて
今が繋がってるから。



そうやって根性で掴み取る
夢もいいと私自身が思えたから。



そんな願いを沢山閉じ込めて。





雨の音を降らせて、
挫折の景色に色を添える。



太陽が降り注ぐ、
晴れやかな光は未来を膨らませてくれる。






「どうでしたか?」





演奏を終えて、
誠記さんに感想を求める。


何時の間にか、太田先生も美佳先生も
部屋の中に集まっていて、
私が演奏する、史也くんの曲を聞いていてくれた。




私色に染め上げられた
大好きな史也くんの曲。




感想を求めたのは自分なのに、
評価が怖いって思う。






「奏音ちゃんらしさが出てるって
 俺は思いましたけど、
 先生たちは?」




そう言って、拍手をしてくれた
誠記さん。




太田先生は、私がミミズをはわせた手書きの楽譜を
手に取って見つめながら、楽譜をめくっていく。




「あっ、此処だ。
 このメインフレーズからの転調。

 アイデア的にはいいんだけど、
 もう少し奏音ちゃんらしい演奏があると思うな。

 今のそのアレンジは
 また背伸びしてるようにしか聞こえない。

 等身大なんだろ」




そう……等身大の自分自身。


それを軸に置いて
アレンジした曲だから。



太田先生から『等身大』って言葉が出てきて
凄く嬉しかった。




「美佳からは?」



太田先生にふられて、
美佳先生も私に向き直る。





「成長したわね。

 最初の貴女の演奏からは
 考えられない成果ね。

 次の大会。
 今度こそ、ファイナルまで行きなさい。

 貴女なら行けるわ」





そうやって背中を押してくれる
頼もしい存在。

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