Last present ~夢を繋いで~ ※Episode2&3追加5.30



「……居るよ……」






少しの間を置いてアイツは俺が
聴きたくなかった言葉を紡いだ。





惨敗か……。




多分、奏音の事だよな。



史也もアイツの事、めちゃくちゃ可愛がってた。



俺が焼きもち焼く程度には。





そして奏音も……アイツも、
史也が好きなのは目に見えてわかってる。






大人しく……俺が身を引くしかないのか……。






そんな風にグルグルと思考を巡らせながら
溜息をつく。





「秋弦……心配しなくてもいいよ。


 お前が思ってることにはならない。

 奏音を追いかけたいなら、
 何処までもお前の感情に
 真っ直ぐに向き合っていくといいよ。


 俺には……確かに好きなヤツがいる。

 だけど……俺はソイツの名前も知らない。

 ただ……遠い昔、母親に連れられて出掛けた
 どっかの屋敷でのコンサートの時にさ、
 そいつは、柊の葉っぱをくれたんだ。

 そこに居る奴らは、俺の顔色ばかり伺って
 演奏って言っても、俺は飾りにすぎなくて
 見世物にすぎなくて、イライラしてた時にさ。

 そいつだけが、柊の葉っぱをくれた。

 家族以外に、恩師以外に……幼馴染以外に
 一番最初に、ありのままの
 俺に気が付いてくれた奴だから。

 『ゆうひ』って呼ばれてた」





史也が紡ぐ言葉にほっとする俺と、
奏音の初恋の終わりを知った。



嬉しいはずなのに……でも俺は史也を許せない。







「だったらさ、お前。

 どうして今まであんなに奏音に優しくしたんだよ。

 アイツが……奏音がずっとアンタを慕って好きなのは
 気が付いてただろ?」




気が付いてただろ?




俺は一体どうしたいんだよ。





アイツを抱きしめたい。



だけどアイツが
泣く姿は見たくない。









心の中が、
奏音の事でいっぱいになる。 








「奏音ちゃんと居る時間は楽しかったよ。

 妹と居るみたいでさ」






続けた紡がれた言葉に、
俺は「えっ?」っと間抜けな声を出す。





「妹ってどういうことだよ」





入り込んじゃいけねぇーって
ストッパーがかかりそうになる心と、
真実の全てを知りたいって思う心が
入り乱れる。






「史也には、
 妹が居るはずだったんだ」






若杉が史也の顔色を覗きこみながら静かに告げる。
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