Last present ~夢を繋いで~ ※Episode2&3追加5.30



その夜、私は待ち合わせの公園へと足を進めた。





そこには約束通り史也くんの姿があった。






「ごめんなさい。
 私が誘ったのに」

「構わないよ。

 奏音、グランプリおめでとう」




そう言って、史也くんが
私の前に小さな紙袋を手渡す。


受け取って覗きこむとそこには
小さな箱が入っていた。


その箱を取り出してゆっくりと開くと、
鍵盤の形をしたペンダントが入ってた。



「可愛いvv」

「良かった。
 気にいった?」



問われるままに頷くと、
史也くんは、そのペンダントを私の手から抜き取って
ゆっくりと首元へとつけてくれた。


首元からぶら下がった鍵盤部分を
片手で軽く握りしめる。




「えっと……あの……。
 私と付き合ってください」






一気に告げて、
そのまま体をぺこりと折り曲げる。




そんな私に、史也くんはゆっくりと
体に手を添えて続けた。






「奏音ちゃんの気持ちは知ってたよ。

 気持ちは嬉しいけど、
 俺が君に対する気持ちは、
 恋愛感情ではないから。

 奏音と居る間、
 俺は妹と一緒に居るみたいで楽しかった」





史也くんの言葉に、
泣くことも出来なかった。





思ってたけど、多分……
何処かで諦めてたのかもしれない。



こうなるかも知れないって。






「妹?」


「あぁ、奏音には
 残酷な事をしてしまったかも知れない。

 だけど君と過ごせた時間は、
 俺にとっては大切な時間だよ。

 君の恋人になることは出来ない。

 だけど……今の同じような関係でも構わないなら
 俺は、俺が居た世界で輝き続ける奏音を
 見守ってるよ。

 俺を夢を受け継いでくれた
 大切な存在の君を……」






史也くんの答えに泣くになけないまま、
私は握手を交わして、公園を後にした。





初恋が失恋に変わった日。





その日が、
私の新たな旅立ちの日になった。








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