この恋、賞味期限切れ


*



ひりひりと皮膚を刺す傷口に叩き起された。


半開きに持ち上げた目に、白い天井がぼんやり映る。

消毒液の匂いがした。


まだぼうっとする……。

起き上がろうにも、背中や頭が痛くて力が入らない。



「わたし……」



私、何をしていたんだっけ……?


ここは……保健室、だよね?

保健室の先生や他の生徒がいるのかな。物音がしない。わからないな。体育祭だし、私ひとりかもしれない。


……そうだ。体育祭だった。


さっきまでのにぎやかさとは打って変わって、静寂が漂う。

なんだか別世界に来たみたい……。


意識がはっきりと醒めるのを待っていると――ガラッと、扉がスライドされた。



「……失礼します」



この声は……南だ。南の声だ。


脳裏に、気絶するまでの出来事がよぎる。


私は、ゆかりとの戦いに敗れた。

あとちょっとだったと思うんだけどなあ。騎馬から落とされ、気を失ったんだ。

それから、南がここまでお姫様抱っこで運んでくれて……それで…………。


……って、お姫様抱っこ!?



え!? お姫様抱っこって、あの!?
……ああ、そうですね、まちがえようのないお姫様抱っこでしたね! 背中と太ももにたくましい腕が……いやいやいや! 私、ヘンタイか!? ちがう! ちがうから! たしかにドキドキはしたけど……!

はっ! 体重! 重くなかったかな!? 南に幻滅されてない!? 大丈夫そう!?



やばい。変な汗が出てきた。

心臓もさっきから、ドックンバックン、うるさく飛び跳ねている。


ずっと距離感に思い悩んでいただろうに、どうして迷うことなく私を助けてくれたんだろう。


優しくしないでと、言ってしまったのに。

また優しくしてくれた。


……南の気持ちが気になるけれど、今は、南の顔を見れそうにない。


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