君に届けた春風

高屋が長谷部と昼休みに教室で話していると、あかねが長谷部を呼び出し、教室を出た。

高屋が雑誌を見ていると、恵里奈が高屋の前に来た。

恵里奈「高屋くん…」ぶりっ子お嬢様は高屋を見つめる。

高屋「何?」椅子にもたれ恵里奈を見た。

恵里奈「今度の日曜、映画見に行かない?」

高屋「映画?何で?」

恵里奈「だって、私達付き合ってるでしょ?」

高屋はア然とした。

高屋「そうだっけ?俺と行くより、あいつと行った方がいいんじゃん?」高屋は目線をずらし、恵里奈を見ている冴えない男子に目を向けた。

恵里奈は高屋の視線に目を向けると、幼馴染の戸川がいた。
戸川はイケメンではないが、恵里奈にずっと想いを寄せていた。その事を高屋は前から知っていた。

放課後。オレンジ色に染まる教室に恵里奈は1人帰り支度をしていた。

戸川が教室に入ってきた。恵里奈は戸川から目を反らし帰ろうとする。

戸川「恵里奈ちゃん!」
恵里奈は立ち止まる。

恵里奈「気安く呼ばないで!私と話していいのは高屋くんだけなんだから!」

戸川「もう、止めろよ!高屋の気持ちも考えなよ!俺はずっと恵里奈ちゃんを見てきた!俺は恵里奈ちゃんが好きなんだ!」
恵里奈に近づき、恵里奈の唇にキスをした。

恵里奈は戸川を突き放し、頬を叩いた。

恵里奈「私にキスするなんて、100万年早くてよ!」頬を膨らませて、顔を赤らめていた。

恵里奈「ったく!しょうがないから日曜日、あんたと映画に行ってあげるわ…」
戸川は俯いてた顔をあげ、笑顔になった。

戸川と恵里奈はいつの間にか恋人となって付き合っていた。

高屋は予想通りだと確信していた。

それから、月日は流れ。卒業式を迎えた。

女子達は別れを悲しんでいた。

高屋は卒業式終了後、学校を出て奈津と出会ったあの店に行った。

まるで遠い記憶のように懐かしく感じ、小高いとこにある公園にも足を運んだ。

虹は出ていないが、青い空を見上げ奈津を思い出していた。

高屋「奈津…俺達、卒業したよ。お前は今、ど うしてんだ?奈津…会いたい…」
ふっと笑みをこぼし公園を後にした。

それから3年の月日が流れ、あかねは保母さんになり保育園で子供達に囲まれ、子供相手に忙しくしている。

長谷部は、テレビ局の社員になり走り回っている。

高屋は医学大学で医者になるために頑張っている。

奈津はアメリカの研究所で化学研究をしながらレポートを書いて働いている。

それぞれが夢に向かって夢中に歩んでいる。

君に贈った春風は、どこで届くのだろうか…

いつか、奈津みたいな暖かい春風がみんなに届くと空も山も川も海も、みんな君に微笑み、きっと幸せになるだろう。

ある日、高屋は奈津が帰国する事をあかねから知る。

休みの日。柔らかい風が吹く7月。

父親によく連れてかれたあの思い出の山に行った。昔と変わらず草原に木が1本立っている。

高屋は木に近づき見上げ、ふと見ると何か光るものがある。よく見てみるとイルカのキーホルダーが木の峰に引っ掛けてあった。

高屋は目を見開きキーホルダーを手に取る。

周りを見渡し右側を見ると、1人の女性が立ち上がり背伸びをし、空気を吸っていた。

彼女は木の方へ戻ろうと振り向く。

高屋「水月…」
奈津「高屋…」
2人はお互いにゆっくり近づいていく。

高屋「なんで…?」
奈津「2、3日前に帰国したの」
高屋「そっかぁ」
奈津「高屋…私…頑張れたよ?それのおかげで」高屋が握っているキーホルダーを指差す。

高屋「すごいじゃん…」奈津に微笑む

奈津「ご褒美、何くれる?」

高屋は奈津を見つめる

高屋「水月奈津…俺と…結婚して下さい」

奈津は驚いたと同時に嬉しかった。

奈津「はい…よろしくお願いします」と頭を下げ高屋に微笑んだ

高屋は奈津を抱きしめキスをしおでこをつけ、またキスをした。

翌朝。高屋の部屋で奈津と高屋は1夜を共にした後で、奈津も裸で高屋と寝ている。

奈津は目が覚め高屋の寝顔を見つめ幸せそうにわらった。

奈津は布団から出てシーツにくるまり朝日の光を眺め幸せを感じていると背後から高屋が優しく奈津を包む

高屋「何してんの?」奈津の耳元で声を響かせる。
奈津「ん…。お日様にありがとうって言ってたの。高屋に会わせてくれてありがとうって…」

高屋は奈津の首や耳に優しくキスをする。

奈津「くすぐったいよ…」
高屋「奈津…おかわり」奈津耳元で囁く

奈津は横目で高屋を見て「やだよ…」と笑った

高屋は奈津を押し倒し愛を育んだのであった。

奈津も高屋も祈った。

この幸せな春風がどうかずっと続きますように…と。




最後まで読んで頂きありがとうございました。






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