ふたりしずか
深紫
初めはほんの些細な言い合いだった。

「おまえ、俺の先輩と寝たんだろ」
今更何を言っているんだ、こいつは。

孝文の先輩である浩志と私はセフレだった。

セフレとは、なんて野暮な説明はいらないぐらい2011年の世の中にはセックスだけを目的とした関係なんてありふれていた。
少なくともわたしの周りはそうであったし、テレビも雑誌もインターネットも身体だけの関係を誘発させるような表現ばかりが目立っていた。

千年に一度と言われる大震災のあった年の夏、絆という言葉の裏で人は寂しさを埋める何かを求めて、身体の繋がりで心の隙間を埋めていたのかもしれない。

私もそんな1人だった。
< 2 / 3 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop