海月物語。
「あ、あの‥‥。」
海斗は、女に声を掛ける。淡い金色でウェーブ掛かった長い髪。クラゲの前に立つ小柄な女がそこにいる。振り返った女の小さな顔の目からは涙が流れ出ていた。
「ごめんなさい。帰ります。」
女は足早に出口へ向かう。
「ま、また来てください。」
海斗の声が女の耳に聞こえたかはわからない。
 それから毎日、女はクラゲの前に、現れるようになった。
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