宿命(仮)
母さんは片付けが上手だ。
さっき片付け始めたばかり
なのにもう母さんの足元は
すっきりしている。


それに比べてあたしは
一向に進んでいない。


あたしは母さんには似てない
手先も不器用だし
料理もできないし
掃除は全くできないし…


そんなので1人暮らしを
する ってある日突然
娘に言われてびっくりしない
親はいない。


母さんも父さんも始めは
猛反対だった。
(それを説得したあたしは
我ながらよくやったと思う。)


母さんはあたしが
脱ぎっぱなしにしていた
白い膝上丈のワンピースを
じっと見つめていた。

「母さん、それ、
欲しいならあげよっか?」

母さんはあたしをぱっと見て

「はあ?だーれがこんな
子供っぽい服着るねん!!
あんたなあ、こんなみっじかい
もン着て、変なおっさんに
声かけられたらどないすんの!」


「そんなん、あたしももう
着ぃひんもん、じゃあ家に
置いといてよ。」

「まあ、置いとくくらいなら
かまへんけど。母さんこんなん
着ぃひんからなっ。」

そう言って母さんは
ワンピースをたたんで
椅子にかけてあったエプロンを
掴んで部屋から出て行った。

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