Live as if you will die tomorrow











いつものように帰宅すると、玄関から続く廊下に、リビングから仄かな明かりが漏れていた。




ー葉月、まだ寝てないのか?



驚いて時間を確認すると、時刻は午前4時。


不審に思いながら、ドアを開け、リビングに入って。


「…はは」


待っていた光景に、脱力して、笑みが溢れた。

リビングのテーブルには、ご馳走、とは言えないけれど、いつもより品数の多い食事が並べられていて、29のロウソクと、anniversaryの文字。


その真ん前に、突っ伏して寝息を立てている葉月がいた。


ーなんで今年に限って思い出したんだ?


毎年あるわけではない妹の行動は、俺の理解を越える。


ー確かに今年はある意味で、記念にはなりそうだな。


ジャケットを脱ぐ前に、ケーキの生クリームを、指でひと掬いして、舐めた。





「ー甘………」



甘さは、ひとの気持ちを弛めさせる。

口の中にじんわり広がるそれが、どうして心に触れるのか。


甘さなんて、必要ないと分かっているのに。



「………」



この日だけは、さすがに視界がぼやけた。

ここから出ることのできない、息苦しさに。
< 116 / 314 >

この作品をシェア

pagetop