意地悪上司に求愛されています。(原題 レア系女史の恋愛図鑑)

 しかし、メールを読むたびに無視ができなくなってしまった。
 彼からのメールを読んでしまうからいけないのだろうか。そう思った私は一度だけメールを開くことをやめたことがある。

 しかし、それはあまり得策ではなかった。

 メールが気になる、気になる、気になる。どうしようもなく気になってしまう。

 内容はいつも天気の話だとか、食べ物の話とか、会社であった事や、通勤の途中で見た景色など。
 特に重要事項などは書かれていない、変哲もないただのメール。いや、日記のようなものと言った方がシックリくるかもしれない。

 仕事の内容じゃないことは分かっている。分かっているのだが、メールを見て見ぬ振りができない。
 それなら消してしまえばいいじゃないか。そう思ったのだが、消去のボタンを押すことはできなかった。

 メールを開くか、開かないか。それだけのことなのに一時間も悩み続けてしまった。
 長い間考え込んだ挙げ句メールを開き、それに対して短くそっけないメールを送ったということがある。

 そのことがきっかけで、彼からのメールは逐一確認し、短い返事を送るようになってしまったのだ。
 社会人たるもの、メールの返事を返さないのはいかがなものか。そう自分に言い聞かせて渋々と送っている。そう、渋々だ。そこだけは強調させていただく。
 
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