意地悪上司に求愛されています。(原題 レア系女史の恋愛図鑑)

「お父さんは忘れているかもしれませんが、お姉さんも同席していたところで契約したはずです。お父さんが何を言おうが、縁談を持ってこようが、従うつもりはありません」
『……』
「ということで、失礼します」
『ちょっと待て、麻友!』

 なにやら慌てた様子の父の声が聞こえたが、このまま会話を続けていても堂々巡りになることは目に見えている。
 それがわかっていて会話を続けるほど、私は暇ではない。

 一方的に電話を切り、スマホをテーブルに置いた。

「昔からどうも馬が合わないのよねぇ……」

 娘を政治の道具に使おうとする父親の気持ちがわからない。

 そんなに地盤固めが必要なのだろうか。菊池という家の名を大きくしていきたいものなのか。
 田中と結婚することによってのメリットがあると判断したからこそ、父は動きだしたのだと思うが……
 もう少し人選の吟味をしていただきたいものだ。
 
(木島みたいな男は、政治家向きかもしれないわね)

 チラリと脳裏に浮かんだのは、NYの地でバリバリと仕事をこなしているであろう男の顔だった。

 ああいう男こそ、姉の旦那にピッタリだ。
 夫婦揃って政治家。シックリくるからスゴイ。

 そんな考えがフッと浮かんだが、どうしてだか胸の奥がモヤモヤとする。
 
「全く、とんだオフの過ごし方だったわね」

 モヤモヤついでに、オフを満喫しろと私に助言してきた木島に八つ当たりをした。
< 55 / 131 >

この作品をシェア

pagetop