意地悪上司に求愛されています。(原題 レア系女史の恋愛図鑑)
11 再会は牛丼屋で

 残業明け、牛丼屋で“いつもの私の定番メニュー”である牛丼特盛り、玉入り汁だく二杯と味噌汁を食べていると、横に誰かが座った。

 私が座っているのはカウンター席である。隣に誰が座ろうととやかく言うのもおかしいだろう。

 しかし、辺りの席を見渡すが空席はある。かなりあると言ってもいいだろう。
 人もまばらな牛丼屋。それなのに、わざわざ私の隣に座るとは……

 怪訝に思ってチラリと視線を向けると、そこに木島がいたのだ。ビックリしたなんてもんじゃない。
 彼はNYの地にいるとばかり思っていたのだから。

 今朝送られてきたメールにだって、日本に戻るだなんてことはひと言も書かれていなかったはずだ。
 彼は、私の方を見てほほ笑んでいる。

「久しぶり、菊池女史」
「あんまり久しぶりって感じがしないわね」
「そうか? こうして顔を合わせるのはひと月ぶりだけど?」
「……」

 そういう意味ではない。確かに木島と顔を合わせたのは、ひと月前である。
 ペンを『モノ質』にされ、渋々とランチを一緒にとった日以降は、彼とは会っていない。

 しかし、あの日は本当に災難だった。

 ペンを返すからランチを一緒に、という交換条件の下、会社のロビーで木島と待ち合わせをしていたのだが、そこに厄介者であり空気を読めない、その上勘違い男である庶務部課長の田中が来て掴まってしまったのだ。

 それを華麗に蹴散らしてくれたのが、この男である。
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