意地悪上司に求愛されています。(原題 レア系女史の恋愛図鑑)

 実家の父に話したところで、話を蒸し返すことはしたくはない。

 忙しくて電話に出てくれないかもしれないことを承知で姉に連絡を取ったが、コレと言って父が私に対して行動を取っているようには見えないとは言っていた。

「だけどね、麻友。お父さんは貴女を傍に置いておきたいと思っていることは確かよ。だから気をつけて。貴女可愛さに、お父さんは何をしてくるかわからないわ」

 姉はそんな恐ろしいことを言っていたが、その話の大部分は間違っていると思っている。

 父と私は所謂犬猿の仲というヤツである。

 父が可愛がっているのは、容姿端麗、頭脳明晰であり、父に対して従順な姉である。
 間違っても私のことを可愛がってというのは嘘だ。

 父としては私を体の良い政治の道具、しいては菊池家の道具としか思っていない、血も涙もない男である。
 そんなふうに私を手元に置いておきたいなどと言った考えを持っているとは到底考えられない。

 そう反論した私に、姉は深いため息をついていた。

「麻友とお父さんは本当意地っ張りだから」

 と苦笑していたが、私はそんな姉に大いに反論するつもりである。

 とにかく、だ。特に実家も動いていない。田中も諦めた様子。こんなめでたいことがあるだろうか。
 祝杯を上げたい気持ちだ、そんなふうに思っていた矢先だった。

 営業事業部にとんでもない情報が飛び込んできたのだ。

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