命の火
そう言って笑ったのは私の妹だった。
妹は生まれつき心臓の穴が他人より少しずれていた。
幼い頃から病院に足繁く通っていたのだが、今はだいぶ良くなったらしく家で家族と共に過ごす時間が増えた。
それでも絶対安静なのは変わらず
「ねぇ、ルツ」
『なに?』
ベッドに横たわった彼女の横に腰掛ける。
今日はいつもより調子がいいらしく顔色がいい。
「猫の命ってね、9つもあるらしいのよ。」
『そうなのか。』
「すごいわよね、そんなにたくさんあるなんて。」
楽しそうに話す彼女に相づちをうつ。
このなにげない時間が私は好きだ。
「そういえばあの子は」
上体を起こそうとしたので注意すれば、あら大丈夫よ今日は調子いいんだから、と返される。
よいしょー、とベッドの柵にもたれかかって
「最近見ないわね。」
その目はベッド脇の窓の外に向かっていて、何かを探しているようでキョロキョロとよく動く。
「前はあんなに見かけたのにね。元気かしら。」
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