沈黙の境界線



「おめでとう。」


彼の囁きに顔をあげると、不意に深く被っていた帽子をとられて

まだ治りきらない傷と所々、まだ腫れの残るこの顔が露になって、見られるのが恐くて俯こうとすると、彼はその長い指先で私の顎をつかみ


まじまじとこの顔を見つめた。




「・・・ひどい顔でしょ?・・・こんな顔、見られたくなくて帽子を被ってきたのに。」



恥ずかしさと恐さで涙ぐんで聞くと


彼はそっと頬の輪郭を指先でなぞりながら首を横に振った。





「ラテはラテだよ。想像していた通りに綺麗だ。

だから、心配しなくていいから。

俺の前ではありのままでいていいよ。」



初めて会うのに



どうしてこんなにも全てを受け入れてくれるのだろうか・・・


でも、それはお互い様なのかもしれない。



私も

何も知らない彼の事を信じようと思えたんだから。


< 30 / 65 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop