過保護な彼に愛されすぎてます。


「放っておくと奈央ちゃん、ろくなモン食べないし。俺が管理してあげないとね。食事も生活も、奈央ちゃんの全部」

にこりとした形のいい瞳。
どこか笑っていないように見えるのは……私の思い違いだろうか。

「――だから、これはいらないよね」

郁巳くんが不意に指に挟んで見せたのは、職場の人にもらったケーキバイキングのサービス券。

向こうも好意があって渡してきたのではなく、ただいらないからって感じだったから受け取ったのが先週のこと。
期限があるし、行けたらいこうかなって思って、とっておいたものだ。

郁巳くんにも、その話はした。
でも、サービス券はいつも使うカバンのポケットに入れておいたハズなのに……いつの間に抜かれたんだろう。

カバンにしまったなんて話は、しなかったのに。

「それ、なんで……」
「ケーキなら、俺がいくらでも買ってあげるから」

私の言葉を遮った郁巳くんが、爽やかに微笑む。

「これは、俺が捨てとくね」

見つめる先で、綺麗な指がサービス券をびりびりと破る。
細かく破かれた紙屑が、テーブルの上にパラリと落ち、気持ちが静かに冷たくなった。

「仕事が終わったら、ちゃんと俺の部屋に帰ってきてね。約束」

二十年も見続けている幼なじみの笑顔。

そこに、逆らっちゃいけないなにかを感じながら「うん」と頷くと、郁巳くんは優しく微笑み、私の頭を愛しそうに撫でた。


その手が、腕が。微笑みが。

なぜか鎖に見えた気がした。







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