君を愛さずには いられない
ζ.変わる想い
河村は席にいなかった。

まだミーティングらしい。

中野もミーティングルームだろう。

俺はカウンター越しにパレットのオフィスを見回した。

大半が外出中だ。

自分のデスクに向かい

河村のプライベートな部分に思いをはぜた。

採用初日に

なぜパレットを選んだのか聞いた時のことを思い出した。

「残業がゼロだからです。」

この半年俺は何も知らずに河村と営業に明け暮れ

彼女が目指すものに教訓となるようなものを少しも与えてこなかった。

今日からそうはいかない。

俺が持つすべてを彼女に渡すつもりでいた。

まず自分の彼女に対する態度を改めよう。

今まではギリギリ最低限の会話で済ませてきた。

それではダメだ。

通じない。

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