cherish【チェリッシュ〜恋のライバルは男!?〜】
「わ、わかってるけど…無理に忘れようとしても意味ないじゃん。それなりに時間とかきっかけが必要でしょ?」


「俺にしぃや」


「は?」


それまで横一直線に結ばれていた紺野君の唇の端が、急に斜めにあがった。


「俺をきっかけにしたらいいやん。」

にぃっと笑う紺野君と呆気に取られる私。


古びた屋上のドアが、ギーという音を立てて開く。


ハタから見たら、私たちはどう映ったのだろう。


息を呑むような妖笑を浮かべる少年と、それをマヌケ面で見つめるちっぽけな女の子。


とても絵にはならない。


それでもイイ感じに見えたりしたのだろうか。


だけどこの人には聞きたくなかった。


「あら、お邪魔だったみたいね」


「…ミサキちゃん」


振り向くとミサキちゃんが屋上の扉の辺りで、目を丸くして立ち尽くしている。



恋敵と、私と、西からやって来た新たな小悪魔。


何かが起こりそうな予感がする。


でもそれが何なのか

良い事なのか、悪い事なのか…


この時の私には予想も出来なかった。






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