cherish【チェリッシュ〜恋のライバルは男!?〜】

初めてのディズニーランドは、


予想を遥かに上回るくらい楽しかった。


アトラクションにはしゃいでは笑って、

パレードに感動しては騒いで

お兄ちゃんにバカにされた。


だけど、

どこを探してもミニーちゃんには会えなかった。


ううん、いた事はいたんだけど

遠くてよく見えなかったんだ。


お兄ちゃんの言うとおり、人気者だから仕方ないんだよね。


みんなでベンチで休憩している時に、私がしょんぼりと座っていると



「心、アイス食べる?」


と、ふんわり笑顔のミサキちゃんが言った。



『心ちゃんって、6年のみさき君のお家に住んでるの?!』

『えー!ズルい!!』



何でかな

ここでクラスの女の子達の顔が浮かんできた。


「…うん」

ミサキちゃんは、ミニーちゃんみたい。


いつも笑ってて

可愛くて


みんなの人気者。


「行こ」


差し出された左手を、ためらいがちに取る。


「心とアイス買いに行ってくるね」


おばさんに声をかけて、私たちは歩きだした。



「学校どう?楽しい?」


ミサキちゃんが私の顔を覗き込むように聞く。


「うん、楽しいよ」


嘘じゃないよ。


今は楽しいよ。


「そっかぁー良かった!心ももうすぐ5年になるもんな」


いつもと変わらずにっこり顔のミサキちゃん。


何で?

ミサキちゃんは嬉しいの?


心はやだよ。


5年生になんてなりたくない。




アイスの売ってるワゴン車の前にやって来ると、


「ここで待ってて」


と、ミサキちゃんが列に並ぶ。


離された右手をじっと見つめた。


さっきまであった温かさが、


まだ少しだけ冷たさの残った風と共に無くなっていく。




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