◆Woman blues◆
心の中の私が、私に向かってそう罵る。

「彼女とはなにもない」

私は立ち止まると太一を見上げた。

「そんな格好をして彼女と待ち合わせて、よくも……」

言いかけて、口をつぐむ。

やめた。バカみたいだ。

その代わり、ありったけの笑顔を太一に向ける。

「私達の間にも、なにもない。これから先も」

太一の眼が大きくなり、僅かに唇が開いた。

私は続けた。

「もう終わりにしましょう。今後は一切、私に話しかけないで。さよなら」

私は太一を一瞥してそう言い放つと、マンションへと歩を進めた。

太一はもう追っては来なかった。

部屋に帰ってシャワーを浴び、部屋着に着替えると、私はソファに座って目を閉じた。

……彼の話を聞いていたら、この状況は変わったのだろうか。

……いや。

もう、期待はしないでおこう。

悲しくなるだけだから。

私は大きく息をついた後、スマホを手に取りタップした。
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