◆Woman blues◆
太一に軽く手をあげると、麻美は颯爽と店を後にした。

太一は私にゆっくりと近づくと、フワリと笑った。

「こんばんは、夢輝さん」

「太一……どうして?」

太一は私の耳元で小さく囁いた。

「会議が終わった時、麻美さんからラインが入ってたんです。もう当分、夢輝にブルースは聞かせなくていいって」

そんな私たちを見て、オーナーがカウンターの向こうから静かに微笑んだ。

それから私の薬指を見て、胸に手を当て騎士のようにお辞儀をした。

思わずオーナーに微笑んだ私に、太一が優しく声をかける。

「さあ行くよ、夢輝さん」

「うん」

私は伸ばされた太一の手をしっかりと握った。

もう、この愛しい彼の手を、私は二度と離さない。

店内の青いライトを反射した薬指の指輪は、より一層深みを増して輝き、私と太一の未来を彩っていた。




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