気まぐれイケメン上司に振り回されてます!
でも、思い切ってというか、バーッと伝えてしまったあの勢いは必要なものだったかもしれない。

景さんと恋人同士になれたから、広い心でそう思える。

「……どうもありがとうございました」

「本当だ。俺はどこまで良い人ぶればいいんだよ」

そう言われて困ったけれど、賀上さんの余裕のおかげで戸惑いを引きずることはない。

「あの、ひとつ訊いてもいいですか」

「なんだ?」

「賀上さんは今、峯川さんのことをどう思っているんですか?」

訊こうと思っていたけれど、そのままになってしまっていたこと。
わたしの質問に賀上さんはふっ、と笑った後、瞳を伏せた。

「あいつがニューヨークに行った後もたまに連絡は取っていたし、今も世間話をするくらい親しくはしている。綺麗な女だと思うし、お互いに考えていることをなんとなく察したりできて、一緒にいて気楽だ」

穏やかな声色の賀上さんは、通路の奥を見つめていた。

「……けれど、恋人だった頃と同じ感情があるかどうかと訊かれたら、少し残っているのか、どうだろう俺もわからないな。だから、女の趣味が変わったのかお前で確かめようとしたのかもしれない」
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