気まぐれイケメン上司に振り回されてます!
「いいんですか?」

「だって、俺に会いたいって言ってるんだろ? なにか仕事を頼みたいのかもしれない。違ったら、適当にあしらうから平気だよ」

気だるげにそう言った景さんは立ち上がってドアへと向かっていくが、途中でこちらに振り返った。

「すぐ終わるから、ここで待ってて」

「あ、はい、わかりました」

わたしが返事をするのを見届けた景さんは、作業ルームを出て行った。



言った通り、景さんはすぐに戻ってきた。
たぶん、五分もかからなかったと思う。ドアが開いて景さんが現れたとき、ソファに座って待っていたわたしは予想外の早さに目をぱちぱちさせた。

「えっ、早すぎじゃないですか?」

「村野くんの言う通りだったから。仕事の話じゃなくて、俺に会いたかったんだって。すぐに帰ってもらったよ」

ドアから一直線に作業テーブルへ歩いていった景さんは、なんだか不機嫌そうだ。

先程、景さんが出ていった後村野くんがわたしに話してきたけれど、結構綺麗な女性だったらしい。

「なんて言って対応したんですか?」

「連絡先を聞かれたから、無理って断った」

「相手の女性、美人だったんですよね?」

「美人でも、連絡先を聞くためだけに会社にやってくるような女、迷惑でしかない」
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