そして俺は、君の笑顔に恋をする

(…できた……!)



本当に簡単なものだけ。


あり物で作ったそれが、工藤の口に合うかは分からないけれど黒瀬が久しぶりに、誰かの為に作ったものだ。


(兄さんがいた頃はいつも作ったっけ…)


そんな風に想いを馳せながら黒瀬は顔を上げた。



「…え、アレ…??」


見上げた先に、工藤は居なかった。


いつの間にいなくなったのか。


きょろきょろと辺りを見回すと、オリオンがトコトコと歩いて玄関の方に向かっていった。


後を追うと、玄関のドアにかりかりと爪を立てているではないか。


一緒に工藤を出迎えたことがあるから黒瀬は知っているが、この動作は工藤の事を扉の外で待つ仕草。


彼が仕事に出ていった時も一時間は玄関の扉の前から動かなかった。


大好きなのだろう、工藤の事が。


一緒に居れば喧嘩ばかりだが、それもまたオリオンの愛情表現の一つなのだと、それを見てようやく知った。



「工藤さん、外なの?」


「んにゃあ…」



玄関に近づくと、扉の外から小さく彼の声がする。


電話か何かで誰かと会話しているみたいだ。


しばらくオリオンと並んで工藤が戻るのを待っていると、



ガチャ


「―――…じゃ、はい。はい。そのように、お願いします。失礼します

…ふう、ってうお?」


「おかえり」


「いつからそこにっ!!?」


「フニャーー!」


「ぎゃっ!!オリオンまたかテッメェ!!」


「こら」




案の定、ルーティンの様にオリオンに飛びつかれる工藤がいた。





...





「わあ、黒瀬、昼飯作ってくれてたのか!!ありがとうな!!」


「昼ごはんと言うより、夕ご飯の方がしっくりくるかもしれないけど…」


「ん?そうか?」



黒瀬に促され、そこでようやく時計を見た工藤。



「うっわ!もう五時じゃねーか!!気づかなかった…」


「すごい集中力だったもん…私がキッチン使ってるのも気づいてなかっし」


「そうだよな…ごめんな気ぃ使って飯まで作ってくれて」


「別に。口に合うかは分かんないけど…」





そうやって二人と一匹は遅い昼食、というより少し早めの夕食を取り始めた。



やはり寝食に関しては忘れてしまうことが多いようで。


いつの間にか限界を通り越して、空腹や眠いと言った感覚がマヒしてくるらしい。


「…飯なんて食べたのいつぶりかなあ…」と呟きながら、工藤は黒瀬が残り物で作った作った野菜炒めとチャーハンを口に運ぶ。


「んん!!上手いよこれ!!黒瀬は料理も得意なんだなあ!」


そんな事を言いながらモクモク食べるもんだから、黒瀬の心の中にぽおっと温かな何かが溢れだす。


随分と長く忘れていた、幸福感に似た気持ち。


「ん?どうした、食べないのか?それとも、どっか具合悪いか?顔赤いぞ」


「……っ!!別にっ!!」


こちらに手を伸ばしかけた工藤を払いのけ、黒瀬は慌ててもっもっもっとチャーハンを口の中に詰め込む。


何が何やら分かっていない工藤はキョトンとしたまま再び美味しいご飯を口に運び入れた。




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