すべてが思い出になる前に
12) 言葉にして伝えたい





家を飛び出してひたすら走り、駅の方へ向かっているとポケットに入れていた携帯の着信音が鳴っていた。



「はい、もしもし‼︎」


「おい涼太、今駅に向かってるんだろ?照史が車でお前を追いかけてるから、もし追いついたら車に乗り込め‼︎」


「いや、走ったほうが早いから」



そう言って涼太に電話を切られた翼は、キッチンで洗い物をしていた茜と目が合った。



「涼太は何て?」


「走った方が早いって切られた」


「あらら…間に合えばいいけど」



この場を冷静に捉えている茜に対して、不思議に思う翼が話しかける。



「何でそんなに冷静でいれるんだよ⁈」


「私たちがあの2人を温かく見守ってあげる寛大な心を持ってなきゃ」



茜はふふっと不敵な笑みを浮かべ、思わず後退りする翼であった。





< 259 / 369 >

この作品をシェア

pagetop