すべてが思い出になる前に
14) 愛しき人に未来を
大学院薬学研究科を卒業するまで、あと一年。
そろそろ、卒業後の進路を決めなければならない。
学食でランチセットをお盆に乗せて、空いているテーブルを探していると、遠くから手を振る鴨川を見つけた。
「お疲れ」
鴨川の向かい側の席に座り、メインの塩唐揚げから食べ始めた。
「なぁ、宮﨑は進路どうすんの?大学に残るのか?」
「どうすっかな…。大学で助教になるか、いや、実績がないからダメだな。じゃあ製薬会社とか」
「そうなったら、部署はどこ希望?」
「部署⁇」
「製薬会社なら開発職か研究職あたりに就くんじゃないか?それともMRとか、意外と営業向いてたりして⁉︎」
薬剤師の職場というと調剤薬局やドラッグストアが主だが、近年「企業薬剤師」という資格を活かした働き方がある。