すべてが思い出になる前に
15) 大きな夢に向かって
桜が咲き誇る4月
涼太は大学院を修了し、大手製薬会社の研究職として働き始めた。
入社当初から長身で爽やかな印象の涼太が目立たないわけがなく、男女共に注目の的となった。
研修中に声をかけられた際に、大体同じ様な事を何度も聞かれる。
『どこの大学院?』
『彼女はいるの?』
『何年付き合ってるの?』
聞かれた質問には答えるが、自ら自分の話や身内の話をすることはなかった。
社会に出て仕事を覚えることは勿論大変なことだが、1番厄介なのが【恋愛問題】だった。
はたから見ていて彼氏彼女が居ない又は、独身の人達を無理やりくっつけようとする先輩や上司を目の当たりにした。
人の気持ちを考えずに、物事を良いように進める事は見ていて遣る瀬無い気持ちで一杯だった。