すべてが思い出になる前に
「それよりもう出ようぜ、真っ直ぐ家に帰るだろ?」
お互いの成績表を返し、友理奈は自分の荷物をまとめて2人一緒に図書館を後にした。
揺れる電車の中、座る場所が空いてなく扉のそばに向かい合わせで立っていた。
外の景色を見ていた友理奈は、ふと正面にいる涼太と目が合った。
「あのさ‼︎」
『あのね‼︎』
同時に声が重なった。
「先に言って‼︎」と友理奈に言われて、話し始める涼太。
「まだこの話誰にも言ってないんだけど…。俺さ、テニスの推薦が何校か来たんだけど、その話を蹴ろうかなと思ってる」
真剣な面持ちでそう話す涼太に対して、友理奈は大きな目を見開き、終始驚きを隠せずにいた。