アシスタント!!
「その、り、里花さんから、連絡あって、家に、持って帰ったらしくて、り、離婚するなら破くって」


あわよくば、こうなる機会を窺っていたのか。


ただそれで、仕方ないから寄りを戻そう、可愛いわがままだ、とは思うまい。


電話越しに聞こえた、戸惑い、言いにくそうな声に、


「ほっときなさい」


「えっ…」


「もう描いてます。あったんなら、邪魔せんでください」


若干、苛立った声で。


「締め切り、間に合いますよ?もう描かなくていいんですよ?!」


巧が不思議そうに。


「その女の手元にあるんなら、無事に返らんでしょう。もういいです!!」


返ってきても汚されているかもしれない。


語気を強め、本気で怒った那住を初めて見た直見は、びくっとなる。


おそらく電話の向こうにも空気は伝わった。


わざわざ描き直す方を選ぶ辺りが、世間で偏屈と言われる由縁であろうが。


結局、彼女も自分の首を絞める形になってしまった。


「…すみません」


顔を上げることもなく、呟いた言葉が、自分に言われたようで、


「いえ…」


「そういうことです」


「じゃあ切るね!忙しいから」


「直見さん…」


まだ何か言い掛けたが、電話を切ると、ペンを執り、紙に向かう。
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