梅に鶯 ~新選組と私に刀~
日が落ちた頃


そろそろ娘を帰さねばと案じた



「家は、近くなのか?」


「……まぁ」




娘は、ニコリと笑い



「もう追わないから、お先にどうぞ!」




ニコニコとしているが、腹の中は

全く違う気がした


今、俺が先に帰れば


娘は、帰らずどこぞに身を投げるような


不思議とそんな不安に狩られた



「何かあったのか?」



「そんな風に見えます?」




正直なところ、全く見えない

だが、試してみた




「見えるから、聞いている」



クスッ と笑い



「兄と慕う、大切な人を傷つけたの……
今日、九州に旅立ったから、もう
会えないの……」



「会いに行けばいい」


「私…年明けに、江戸に帰る」



少し娘の嘘が見抜けるようになった



「なぜ、九州についていなかった」


「……私、刀が好きなんです
なのに、私の父は、刀を持った人とは
結婚しては、ならないと遺言を……
気の乗らない相手との縁談は、辛かった
たまたま…好きになった人が
刀を持ってて……その人を諦めるために
私… 刀を捨てたの」



「で?諦められたのか?」


「困ったもので益々、好きになっていくの
だから、嫁にいこうとしたんだけど
そのお兄ちゃんが、邪魔して
……邪魔することは、予想してたけど
その刀の人も、邪魔してくれたらなぁ
……なんて、バカですよね!!
あ……やだ!なんで貴方にペラペラと」



「ここで会ったは、何かの縁だろう」



「はい!お友達になってくれますか?」



娘の言葉に、目を開く



「ふふっもう会うことないでしょうけど」



「お前は、もう友だ
俺はな、友の為なら、無茶も出来る」


「私も!お友達は、大切にします!」


「よく、友からは、お節介者と言われる」


「お節介者?」


「お前に友として、最初で最後の
お節介をしてやろう」


「え?」 






娘の鳩尾を突き、意識を奪った



















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