人魚になんて、なれない
5th Day side波音
八月の第一日曜日。屋外プール。現在の時刻、午前八時。


今日もプールサイドでひとり、準備体操をする波音。


空を見上げれば、期待を裏切らない晴天。


ここのところ、水不足を心配するほど雨が降らなかった。


そのおかげで、プールに入れるのだが。


プールサイドから飛び込んで、いつもどおりのウォーミングアップ。


冷たい水の中を、波音は泳ぎだした。


プールの中は、青い。


水の色ではもちろんなく、プールの床と壁の色だが、波音はこの青が気に入っていた。


白い床では、光の模様が床によく映らないから。


いろいろな形に姿を変える光。


水の中では光が形になることを、ほとんどの人は知らないのではないだろうか。


いつまででも見ていたいが、息が続かない。


少し呼吸が苦しくなったところで、体を反転させた。


仰向けに泳ぐと、太陽がまぶしい。


目を細めながら泳いでいると、気になるところを見つけた。


美術室の窓が、開いていないのだ。
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