Four you ～２＋２＝４＝２×２～
結局その日、尾張先生は見つからなかった。大切な話の途中に抜ける、そんなことは絶対にしないと分かっているからこそ、いなかった理由は何だったのか、心配だった。

「どうしちゃったの、詩音」

いつもより少し星が少ない夜空を寮の窓から見上げる私の背中に、唐突に映奈の手が置かれた。

「わわっ！　…何やもう、びっくりするやんか…」
「何たそがれちゃってるの、詩音？　まださっきのいい話の余韻が尽きないって感じ？」
「それもあるねんけど…尾張先生、どこ行ってもうたんやろって思って…」

二人の顔がにやける。

「恋煩いってやつでしょ？」
「恋煩い？」
「詩音、尾張先生のことぶっちゃけ好きでしょ？」
「…うん、好き…やで」
「やっぱり～」

ポーカーフェイスには自信があったのだが、隠せていなかったようだ。

「確かに尾張先生、イケメンだもんね」
「しかも歳近かったでしょ？　まだ二十代前半だったはず…」

二人が二人で盛り上がっているので、私は再び、星空を見上げた。

雲の上には満点の星空が広がっているのだろうが、私には残念ながら見ることができなかった。この星空を見ているのは、私だけじゃない。きっと先輩達も、あの時こそ「まあいいか」という雰囲気ではいたけれど、本当はもっと気がかりで、目の前のものがこの星空みたいに見えているはずだ。

「…まぁいいか…」

気にすることなんてない。涙ながらに先輩がくれたそのメッセージが、ほんの少しだけ、気にしないでいる力をくれた。西の空には星が多めだった。明日はきっと、いい日になる。また晴れた日がやってきて、大切な人との時間も共有できるだろう…か？
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