Four you ~2+2=4=2×2~
「あっ、台本なら…」

衝動的だった私の体は、割とすぐに私の理性の管理下に置かれた。そして、出しゃばるんじゃない、と口をつぐんだ。勝ち組になるのを放棄したわけじゃない。ここで「出しゃばり」という印象を植え付けるのが嫌だったからだ。

「ん? どうしたの?」

怪訝そうな顔をする耶色先輩。そして、この日最高のパスが送られた。

「台本なら、詩音が書けばいいんじゃない? もちろんアタシ達も協力しなきゃだけど、メインは詩音で」

若奈の発言に、先輩達はきょとんとするばかり。

「詩音ちゃん、台本書くのWELLなの?」
「上手も何も、小説家っすよ?」
「小説家? どういうことかしら?」
「詩音は、C-ONっていう名前で小説を書いてるんです。私も持ってるんですけど…ほら、これです」

映奈がカバンから取り出した「ファントム」を見て、驚いたのは女性の先輩だけではなかった。

「OH! それ、STOREで見たことあるネ!」
「ホンマですか、ランディ先輩!?」
「ボクも見たことあるよ~! …っていうか、持ってる!」
「おおきに、ありがとうございます!」
「まさかこんな所に作家がいるなんてね…。驚いたわ…」

若奈にジュースの一本でもおごってあげたい気分になった。

「…というわけで…台本を書くには…とても強力なので…」
「うんうん! ホント助かるよ! 台本よろしくね、詩音ちゃん!」
「は、はい!」

いつの間にやら、私は演劇部の、それも文化祭という場での劇の台本を考えるという大役を担うことになっていた。大変だろうけど、どこか充実していたのも本当だった。
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